02:そう昔ではない、どこかの国に住む少女のお話
少女の名前は「×××」。ちょっと変わった名前の少女はいたって普通のおとなしい子だった。いや、本来の性格は
年相応に無邪気で素直で明るく活発。しかし、生まれ落ちた場所が、取り巻く環境が彼女が自分自身を閉ざしてしまう
要因となったのだ。
「お母さん・・・。」
家の押し入れの中で膝を抱えてうずくまる×××の細すぎる体の露出している部分には傷、痣、火傷。白い肌に赤、青、黄色の
模様・・・なんて考えてみても悲しさしかこみあげてこない。服だってそう。ボロボロでよれよれ。自分の見てきた同じ年の女の子が着るような
かわいらしい流行りの服を一度でいいから着てみたかった。誰に見せるわけでもない、可愛いっていわれなくてもいいから・・・。
・・・いや。嘘。
かわいいって、いい子だねって褒めてほしかった。お絵かきしたら上手だねって、片付けできたら偉いねって、残さず
食べたらお利口だねって、いうこと聞いたら頭をなでて怖い夢を見たら一緒に寝てほしかった。
汚らわしいって、いらない子って言われたくなかった。お絵かきしたものを破ってほしくなかった。片付けても残さなくても
お母さんやお父さんが望むようしても叩かれたり蹴られたり、熱い物を押しつけられたり、毎日が怖い夢のよう。でも夢じゃない。
痛いって思うたびにイヤでもそう思い知らされる。今日だって、オシオキだって、お前の顔なんか見たくないって閉じ込められた。
でも押し入れの中は彼女が唯一安らげる場所だった。
ふかふかお布団もある。おもちゃもある。怖いお母さんもお父さんもいない。
この中にいるときだけは、優しいお母さんとお父さんを思い浮かべてその中にいる
自分を想像してちょっとだけ嬉しい気もちになるのだ。
「わたしがおとなになって、もっとお利口ないい人になったらいつか・・・」
お母さんもお父さんも褒めてくれるよね・・・?
しかし、少女の夢は叶うことなどなかった。
ある夏の日。いつものように押し入れの中に閉じ込められた。
猛暑、窓も何もない密室空間の中、子供でなくとも耐えられるわけがないのに押し入れの戸が開かないようにされていたのだ。
唯一の居場所が一変、まるで電子レンジの中にいるみたいだなんて思って、暑くて、怖くて、ひたすら暑くて、出たくて
こじ開けようと頑張っても戸はびくともしなくて、叫んでも叩いても開けてくれる人はいなくて。
「お母さん!!お父さん!!暑い!怖い・・・お母さん!!!」
力を出したくても、暑さに奪われていく。
「お母さん!ごめんなさい!!ごめ・・・はぁ・・・はぁ・・・ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。お母さん・・・。」
何もしてないのに、何に対して謝っているのだろう。
ここから出してほしいから謝っているだけだとしてもだ。
私、なんであやまっているの?
私が生まれたことがいけなかったの・・・?
でも、生まれたくて生まれたんじゃない。
産んだのは「そっち」でしょ?
なんで、いらないならなんで私を産んだの・・・?
「ごめ・・・・・・。」
少女はとうとう力尽き、疲れ切って戸の前にへたり込んだ。
「・・・・・・・・・。」
出来ることは何もない。
なら少女は、ここでいつもしていたように、優しいお母さんとお父さんと幸せいっぱいな自分を想像した。そうすることで
気が紛れると思った。
けど、少女はひとりぼっちだった。
ぬくもりを実際にこの肌で感じたことがなかった。
-でもいいの。「あの私」は手をつないで仲良く三人で歩いているわ。
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近所の住民から警察に通報があり、かけつけると押し入れから7歳の少女の死体が発見。
複数の痣や傷から日常的に虐待があったと疑われている。
少女の両親は現在行方不明。
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時は経ち、少女は新たな姿へと生まれ変わった。
痛みを感じない体を得た。可愛く愛でられる為の人形の体を得た。
しかし、その少女「人形」は本来得るはずのない「心」を芽生えさせた。
でも、それはもう少し後のお話・・・。
???「これから貴方は幸せになるわ。だから、差し上げましょう。幸せを幸せだと感じ取れる
ために必要なパーツを・・・貴方にあげる。」
~数年後~
一人の少女「むぅ・・・この子お気に入りだったのに。やっぱやだ!捨てたくない!持って行くー!」
少女の母親「ダメ!もうお人形遊びする年じゃないでしょ!?来年からは小学校に通うのよ?お人形じゃない
お友達を作りなさい。」
少女の父親「ははは、言い過ぎだよ。まぁ、ちょっとこれは大きくて場所をとるからなぁ。」
少女の母親「ほんとよ、あなた。どれだけしたと思ってるの?まだ新しいし捨てるのはもったいないけど・・・ああもう!
忘れましょ!そんなにほしいならもっとすごいおもちゃ買ってあげるから。お人形じゃなく、友達と一緒に遊べるおもちゃなら
買ってあげるわ。」
少女の父親「今すぐには無理だけど、いい子だから我慢できるね?」
少女「・・・うん!」
~数日後~
???「ん?・・・まーでっかい人形だなー。見たところ新品じゃん!もったいなっ!?」
???「ゴミなら持って帰ってもいい・・・よね?うん!何かあったらその時はその時!タダよりうまい話なし!うちの
ドールちゃんも相手がいた方が嬉しいよね!・・・よし!そうと決まればお持ち帰りー!」